新型コロナウィルス対応の政治学56~僥倖と棚から牡丹餅~

書くのは難しい言葉ですが僥倖(ぎょうこう)という熟語があります。

予期せぬ幸運という意味です。菅総理大臣の誕生は、僥倖の要素が大きいです。

新型コロナ対応の激務もあって安倍前総理の難病が再発しました総理を辞職しました。

安倍総理は断腸の思いと語ってました。しかし菅総理にとっては僥倖として作用しました。

総理への野望がなかったのかと言えば心ひそかに抱き続けていたに違いありません。

ただ、菅総理は派閥を率いて総理総裁を目指すと宣言して政治家人生を歩んできてません。

通常のかたちの総裁選挙であれば立候補することは常識的に見てかなりの困難を伴います。

安倍前総理の突如の辞任という緊急事態だったから総理総裁への道が開けました。

菅総理もこの辺りの状況は十二分に認識していると思います。慎重運転で政権は始まりました。

解散総選挙を期待する自民党内の声には耳を貸さずに仕事で実績を残す方向に舵を切りました。

たたき上げらしい仕事師内閣を目指すというのです。私は妥当な選択だと思いました。

僥倖で得たトップの座です。勢いに任せて蛮勇を振るうことのリスクを避けたと思います。

菅総理は、イデオロギーすなわち思想・信条ではなく仕事の成果重視ということでした。

ところがです、突如として菅総理は思想・信条そのものの領域に土足で踏み込みました。

政府にとって好ましからざる研究者を日本学術会議の会員からいきなり排除する行為に出ました。

波紋を呼ばないはずはありません。菅総理として覚悟の決断だったと思います。

総理に就任してから語っていた政治の運営の方向性と真逆の判断と言わざるを得ません。

思想・信条の領域は避けて実務優先で実績を残すはずだったのではないでしょうか。

菅総理の決断は、立民党や共産党にとっては天からの予期せぬ贈り物となりました。

特に立民党にとっては、一足早いクリスマスプレゼントと言っても良いです。

立憲民主党と国民民主党などが再び再結集したものの国民の期待感は高まりません。

70%前後の高い支持率を叩き出した菅政権と比較して好対照でした。

そこに日本学術会議の会員人事が突如として降って湧いたのです。僥倖以上の贈り物です。

棚から牡丹餅という表現の方が似つかわしいと思います。全く意図せぬ出来事だからです。

立民党の枝野代表は実務の政治家ではなく理屈、理論先行で空中戦タイプの政治家です。

日本学術会議人事をめぐる問題は、学問の自由、思想の自由といった理屈、理論自体が問われます。

枝野代表の得意中の得意分野と言えます。弁護士らしい弁舌で激しく迫るはずです。

菅総理は、理屈、理論闘争に強いとは思えません。かといって沈黙で逃げきれるとは思いません。

10月下旬の臨時国会は、菅総理にとって冒頭から厳しい局面になると予測します。

明確な答弁を避け続ける菅総理の姿は、支持率にも影響を及ぼすでしょう。

順調に船出したかに見えた菅政権、総理自らその航路を荒海の方向へ向けました。