新型コロナウィルス対応の政治学57~総合的ふかん的~
日本学術会議の会員人事で6人の研究者が任命を政府が拒否した問題が国会で論議されました。
菅総理自らが出席する委員会ではなく内閣府の副大臣が答弁者でした。
そうはいっても初めて国会の議論のテーブルに乗った訳ですので注目しました。
落胆としか言いようがありません。丁寧に説明し理解を求めるとの菅総理の発言が空々しいです。
「総合的ふかん的」に判断したとして正当性を主張しただけです。理由は答えません。
子供だって理由を問われて正しいから正しいとだけ言われて納得はしません。
安倍政権時代、森友・加計問題や桜を見る会をめぐって同様な事態が起こってます。
判断に至った詳しい経過について結局うやむやになり今なお真相を求める声が根強くあります。
政府がきちんと説明責任を果たすことは国会論議の大前提です。議会制民主主義の基本です。
昨日の加藤官房長官の記者会見の発言の中に政府の考え方が垣間見えました。
6人の研究者について「ひとりひとりの学問の自由を侵すものではない」と述べていました。
個人的な学問の自由は侵していないので問題はないのだと強弁していると思います。
ではなぜ拒否したのかというと日本学術会議は個人的活動の場ではないということになるはずです。
公の活動をする場においては個人的な学問の自由とは別の基準があるとの考え方を暗示してます。
その具体の基準は不明です。拒否された6人の共通性から推測せざるを得ません。
6人は政府が進めた安全保障法制に反対した研究者だという共通性を持ってます。
政府の意向に反する研究者は政府が資金を拠出する公の機関の会員として相応しくないとなります。
個人的学問の自由と公の機関における学問の自由の保障と違いを認めるかどうかという重大問題です。
26日から臨時国会が始まります。今度は答弁者は菅総理大臣本人です。
「総合的ふかん的」とだけ答えて説明責任を果たさないとしたら論外です。
堂々と理由を説明し国会の場での徹底論戦によって是非を国民の前に示して欲しいです。
気に食わない質問につっけんどんな態度で応じるとしたら自ら首を絞める行為です。
日本国のトップです。トップとして明確に説明する立場に立ったことを自覚して欲しいです。
説明にならないような説明を繰り返すようですと菅政権の高支持率も揺らぐと思います。
それにしても菅総理はなぜ任命拒否という判断をしたのか不思議でなりません。
たたき上げの仕事師内閣を標榜していたはずです。実務優先だったはずです。
そうした方向性と日本学術会議の任命拒否は全く方向性が異なります。
実務優先ということはイデオロギー性を可能な限り少なくして実績を積むということです。
それなのにイデオロギーそのものを突如として持ち込んだかに見える判断を下したのです。
実務優先の態度を覆い隠してしまう選択でした。正体をあからさまにしてしまったのです。
菅総理は強いイデオロギー性の鎧を身に着けているとして警戒する傾向が強まるのは確実です。