続・愛国と戦後民主主義の対立を超えて
戦後民主主義の象徴は日本国憲法です。憲法への敬意が保守陣営の中で薄れてます。
日本国憲法は、施行から73年となり見直し論議を深めることには賛成です。
しかし戦後憲法は果たしてきた役割については正当に評価しなければなりません。
戦前の全体主義的な息苦しい状況が解放されて自由と民主主義を得ました。
国民主権が明示され平和主義、基本的人権の尊重が謳われました。
GHQ=連合国最高司令部の強い影響下で制定されたとはいえ画期的なことです。
アメリカの著名な歴史学者は、日本国民は、「敗北を抱きしめた」と総括しました。
日本国憲法を基本となる戦後体制を大半の日本国民が歓迎したとの分析です。
日本国憲法によって欧米並みの様々な国家原則と国民権利を得た歴史を忘れてはなりません。
憲法によって国民の国家意識が薄れた嘆くだけでは物事の半面しか見ていません。
憲法の光の部分もしっかり受け止めて改正の論議をする姿勢が求められます。
菅総理大臣は日本学術会議の人事をめぐって6人を任命拒否しました。
独立した機関として法律で位置づけられている学術機関の人事に突如手を入れました。
菅総理は安倍前総理からの引継ぎではなく自分自ら決断したと明言しました。
「総合的ふかん的」に判断したというよく分からない理由を挙げています。
依然としてなぜ6人にダメ出しをしたか明確な理由は語っていません。
政府が資金を出しているのだから総理として監督権限を有するという趣旨も述べています。
また、それ故に行政改革の対象ともなり得るという考え方を示しています。
菅総理の一連の発言を聞いていて私ははっとあることに気が付きました。
菅総理には、学問の自由を守るとの認識がそもそもないのではないかというものです。
頭の中に憲法で保障されている学問の自由の重要性がなければ、ちゅうちょなんてしません。
政府がお金出しているんだから人事で何しても文句はないだろうと短絡するのも可能です。
最高権力者がこうした認識の持ち主だと学問の自由を奪う自覚なき権力者となりかねません。
憲法論議も辞さずとして今回の人事に踏み切ったいわば確信犯より恐ろしいです。
自覚がなく権力を振り回すことにつながる危険性が多分にあるからです。
憲法の大原則など脇に置き気に入らなければ切り捨てごめんみたいな政治です。
日本国憲法の持つ大原則に沿って権力は行使されるべきであることは言うまでもありません。
政府にとって不都合があるのであれば堂々と問題提起するのが筋です。
議論の手続きを一切省き6人を切るという人事を先行させるなどあってはなりません。
図らずも菅総理の政治体質を余すところなく内外に示してしまいました。
欧米のメディアも批判的に見ています。世界最高峰の科学雑誌も注目しています。
菅総理がとった行動は、非民主主義国の独裁者みたいだと目に映ったのではないでしょうか。
日本の先進国としての国際的信頼感に傷をつけてしまったと私は思います。