日本軍国主義とナチスドイツ

毎週火曜日は、女性史研究家の宇佐美ミサ子さんの資料整理の日と決めています。

今日もいざ出陣です。「出陣」という言葉を使いたくなるほど膨大な資料の山と格闘中です。

宇佐美さんは憲法9条を守る活動を継続されていて関連資料や書籍が多数ありました。

満州事変や日中戦争、太平洋戦争関連の書籍や資料をせっせと自宅に運ばせていただいてます。

私は、日本が推進した軍国主義とナチスドイツの対比に興味を持っています。

一般に日本は責任観念があいまいで空気に支配されて時の勢いに流されたとの理解があります。

これに対しドイツは戦争遂行にせよ大量虐殺にせよ明確な指針に基づいて断行されたと言われます。

本当にそうだったのか、研究者による論考に助けてもらうしかありません。

日本軍がおバカで勢いだけに左右されたなどという事実はないことはわかりました。

日本学術会議の委員から排除された東大教授の加藤陽子さんの著書を読めばよく理解できます。

問題はナチスドイツの方です。至高の著書があることを書店で立ち読みして見つけました。

歴史家の大木毅さんの岩波新書『独ソ戦』です。日本新書大賞2020年の受賞作です。

独ソ戦は、1941年6月から45年4月まで続きました。双方の犠牲者の数の多さに圧倒されます。

ソビエト側は、戦死、行方不明者などで1128万5057人と記載されてます。

これに民間人の犠牲者を含めるとその数は2700万人に膨れ上がります。

一方、ドイツ側は、戦闘員が444万人から532万人、民間人が150万から300万人です。

ヒトラーのナチスドイツは、広大な面積を有するソビエトを植民地としようとしてました。

食料と資源を確保して最終的にはアメリカ、イギリスと戦うシナリオを描いてました。

ヒトラーのナチスドイツはソビエトを甘く見ていました。初戦の大勝利でさらにおごりました。

ソビエトには冬将軍という手強い敵がいます。かのナポレオンでさえ撤退を余儀なくされました。

独ソ戦でもそうです。冬に入ると余りの寒さで戦線は膠着状態になってしまうのです。

ソビエト軍が初戦で大敗を喫したのは訳があります。指導者スターリンが情報を信じませんでした。

張り巡らしたスパイ網からドイツの侵入情報があったにもかかわらず無視しました。

それとスターリンは権力を確立するため有能な将軍も手当たり次第に虐殺していました。

軍を指揮する指導者が不足して満足な作戦を展開できなかったというのですから驚きです。

しかしソビエトは工業生産力を高めつつあり戦車などの生産体制が整っていました。

1945年4月のヒトラーの自殺によってナチスドイツは崩壊しました。

日本が中国大陸を侵略し泥沼にはまっていった歴史と共通項があると思いました。

中国をなめてかかり戦線を広げ過ぎて補給体制が不十分になったことは合わせ鏡のようです。

『独ソ戦』は、日本が戦争の深みにはまった歴史を直視することにつながる必読の一冊です。