ステイ・ホーム、音楽が流れる暮らし

私は楽譜が全く読めません。音痴です。よってカラオケが苦手中の苦手です。

でも音楽自体は決して嫌いではありません。音痴の反動からか歌のうまい歌姫が好きです。

高橋真梨子さん、テレサテンさん、ドリカムも。若い世代では椎名林檎さんの才能にひかれます。

最高峰は、美空ひばりさんです。この方の歌を聞くと他の全員が下手に思えてしまいます。

歌がうまいだけでなく歌を総合芸術的なレベルにまで引き上げた天才にも興味津々です。

松任谷由実さん。歌そのものは、結婚されて松任谷になる前の荒井由実時代の作品が好きです。

松任谷時代になってからは単に歌を歌っているのではなく壮麗な歌劇の主人公の匂いがしてきます。

もうおひとり中島みゆきさん。舞台でひとり芝居を演じているかのようです。

歌詞も歌い方もひきつけてやみません。オペラではありません。日本の演劇です。

歌謡曲やJポップには違和感のない私もクラシックとなると敷居が高かったです。

そんな私とクラッシックとのかすかな接点は妻にあります。妻は高校時代ブラバン部でした。

クラッシックが好きで、結婚した時、かなりの分量のLPレコードを持参してきました。

政治記者時代、直属の上司が大のクラッシック音楽ファンだったのが決定的でした。

30年以上も前のことです。私もクラッシックのCDを購入したり本を読み始めたりしました。

メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲の美しいメロディーを聴いて驚嘆しました。

チャイコフスキーのピアノ協奏曲に衝撃を受けました。激しく鍵盤を叩くようでした。

たまたま耳にしたのがアルゼンチン出身のピアニスト、マルタ・アルゲリッチでした。

よくわからずに購入したCDが、世界最高峰のピアニストの演奏だったのは幸運でした。

情熱のほとばしりがCDから伝わってきます。さすが情熱の国ラテンのピアニストだと思いました。

アルゲリッチがポーランドの作曲家ショパンの名を冠したコンクールで優勝者だと知りました。

ショパンの曲のCDを購入しました。スピーカーから流れてくる音は消え入るほど静かでした。

ピアノ協奏曲1番でした。同一人物の演奏とは信じられませんでした。

これ以上は美しく演奏できないのではと思わせるほどかすかな音色で繊細なのです。

アルゲリッチというピアニストは歌謡曲で言えば美空ひばりさんのようなものだと思いました。

この方の演奏を聴いてしまうとほかの名ピアニストの演奏も何か違うと思ってしまうのです。

新型コロナの影響で在宅の日々が多いのでアルゲリッチのピアノを聴き直してます。

アルゲリッチは、ほとばしる情熱と消え入るような繊細さとを併せ持ってます。

情熱と繊細さは相矛盾します。その両者がひとつになって調和しているところが神の領域です。

哲学者、西田幾多郎の「絶対矛盾の自己同一」という難しい言葉を思い出しました。

ひとは、矛盾しているふたつの事象を調和させてくれるものに美を感じるのではないでしょうか。