新型コロナウィルス対応の政治学57~菅政権発足1か月~

9月16日に菅政権が発足してからひと月が過ぎました。期待外れでした。

たたき上げを自称しながらたたき上げらしいすごみを感じられないからです。

成果を上げようとしてドタバタしている感があります。自信なさげな表情が垣間見えます。

たたき上げのすごみは、現場を熟知していることと捨て身であることから生まれると思います。

政治記者時代に野中広務さんより学びました。野中さんは、地方政治の最前線の政治家でした。

旧制中学卒、町議、町長、京都府議会議員、京都府副知事を経て中央政界へ進みました。

これだけのキャリアを有している政治家はいません。エリート官僚も圧力を感じたはずです。

京都府議時代は、共産党の牙城と言われた蜷川虎三府政反対の急先鋒でした。

捨て身の戦いぶりは中央政界に持ち込まれ権力者に対しても臆することはありませんでした。

菅総理は、大物代議士の黒子として実力を身に着けて横浜市議会議員から衆議院議員です。

自ら矢面に立つ立場に立ったことがありません。常に裏の存在でした。

中央政界では総務大臣を経験し、あとは7年8か月安倍政権の官房長官でした。

官房長官は完全な黒子とは言えないまでも総理の補佐役で広い意味で黒子です。

いきなり日本国のトップ、総理の座に上り詰めたと言って良いのではないでしょうか。

表舞台に立つ訓練が足りなかったのです。本当の自信をつけることができません。

致命的な欠陥があります。弱者へのまなざしが不足しているのではないかと思います。

現場を熟知しているたたき上げならば、現場で悪戦苦闘している弱者の姿に心を痛めているはずです。

野中さんは剛腕を振るう一方で常に弱い立場の人たちへの支援を忘れませんでした。

菅総理の言動からは弱者を思いやる姿勢が感じられません。突き放した感じがします。

菅総理からは、自助努力ではどうにもならな弱者へのいたわりが伝わってこないのです。

菅総理は、初の首脳外交先としてベトナム、インドネシアを選び訪問中です。

両国ともに外国人技能実習生の派遣元の国です。実習制度には欠陥があります。

つい先日、NHK教育テレビで虐待に近い労働実態を告発する番組が流されてました。

戦前の女工哀史と見間違うほどの長時間低賃金労働にあえぐベトナム人女性実習生が登場してました。

先進国であるはずの日本として恥です。こうした課題こそ首脳外交で解決して欲しいです。

派遣国も受け入れ国の日本も研修制度を悪用して儲ければよいという悪がはびこっています。

日本の労働力不足を補う貴重な人材であるという実態にもっと目を向けていくべきです。

野中総理ならば首脳会談で間違いなく取り上げてことでしょう。これが弱者へのまなざしです。

たたき上げを自称するのであれば野中さんの生き様をもっと学んで欲しいです。

菅総理がらつ腕家であることはわかってます。国のために捨て身になって欲しいです。

自助を求めるだけで弱者へのまなざしを忘れてしまっては、強者が喜ぶだけです。