箱根町町長選挙

一週間前に行われた箱根町町長選挙結果に驚きました。195票差の大接戦でした。

前副町長の勝俣浩行さんが飲食店経営の田村洋一さんを辛うじて振り切りました。

投票率は、63.46%でなんと27.64ポイントという驚異的増加でした。

箱根町は、かつての助役、現在の副町長がトップに座る体制が当然視されてます。

56年続いているとのことですので岩盤となっていると言って良いと思います。

ところが今回の選挙ではその強固な岩盤が崩れる寸前にまで行ったのです。

私は勝負は決まっていて民間出身の飲食店経営者がどこまで迫るかだと思い込んでいました。

先入観がいかに見る眼を曇らせるかの典型でした。不明を恥じています。

箱根町の名前は、日本はおろか世界に観光地としてその名が轟いています。

富士山を仰ぎ見る絶好のロケーションの観光地として日本のシンボルの一翼を為してます。

美しさに彩られた華やかな温泉地のイメージとは裏腹に町行政の体制は古さを抱えています。

箱根湯本、仙石原、箱根、元箱根、宮城野、強羅など旧来の村々の名残が色濃いです。

旧村ごとの足の引っ張りあいが懸念されるのです。トップは中立的な立場からが無難となります。

結果としてナンバー2経験者が町長となることがいわば常識化してきたわけです。

町行政に精通している人物がトップに座ることは行政の安定化につながります。

極端な冒険はしません。手堅いです。一方で前例踏襲に陥る危険もあります。

行政の組織的な立場を優先し町民とともに歩むという姿勢が薄くなる恐れもあります。

新人の田村さんはこの辺りの箱根町の体質を鋭く突いたのではないかと思います。

勝俣新町長は選挙結果を謙虚に受け止めて町民の声を広く聴取する町政を展開して欲しいです。

対立した側を排除する選択は結果として自らの首を絞めることとなります。

勝俣新町長は行政のプロですので実務面で間違いを犯すことはあり得ないでしょう。

町民とともに歩む基本姿勢が重要です。行政組織の立場からの目線の転換を図って欲しいです。

箱根町の最大の危機は赤ちゃんがどんどん少なくなっていることです。

女性が一生の間に産む子供の数、合計特殊出生率は、2018年で0.74人です。

驚くべき低さです。大都会は低いと言われる中で東京都1.2です。

箱根町から赤ちゃんがいなくなる恐れがある数字だと受け止めなければなりません。

現在人口は1万人台で近未来大台を割るのは確実です。地域の存続の危機が迫っているのです。

2014年に出版され衝撃を与えた中公新書『地方消滅』を覚えていられますか。

この中で神奈川県内の市区町村で消滅可能性第1位は、箱根町でした。

箱根町というと観光に目を奪われがちですが町を支える地域が危ういのです。

そこに新型コロナショックが襲っているのです。根本から箱根町のまちづくりを見つめる時期です。

勝俣新町長が町行政のプロとして箱根町のまちづくりビジョンの再検討に向けて腕を振るう時期です。

 

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