天道と人道について

足柄の歴史再発見クラブで進めている外国人のための『富士山と酒匂川』のお手伝いをしています。

英語と中国語に翻訳するため全般にわたって文章を簡潔にする必要があります。

絵画や写真や図表を多く用いて文章を少なくし翻訳しなくても理解できるよう工夫してます。

冒頭に日本列島の成り立ちなどを紹介した頁があります。専門的文章を短くするのは難しいです。

高校生向けの地学の教科書を引っ張り出したりして頭をひねりました。

格好の参考書を見つけました。『日本列島の下では何が起きているのか』です。

講談社が発行しているブルーバックスという化学向けの新書の一冊です。

2018年10月に発刊されたものです。著者は、東工大の教授の中島淳一さんです。

中島さんは地震学者で日本列島の成り立ちからなぜ地震が起こるのか最新の知見を紹介してます。

素人向けに書かれた書物とはいえ専門用語は頻繁に登場しサクサクとは進みません。

頁を行ったり来たりしながらかみしめるように歩を進めて行くと何とか理解できます。

読み終わった時に感じたのは、二宮尊徳の天道と人道という言葉でした。

天地の動きは、自然の摂理に基づくもので人の手で操作することはできません。

二宮尊徳はこれを「天道」と呼びました。天道とは何かを究明するのが自然科学です。

中島さんの著書もその一つの成果です。現代科学をもってしてもわからないことだらけです。

地面の下は直接見ることができません。地震波動などを分析して推測しています。

中島さんは度の合わない眼鏡で見ているようなものだと述べています。

それでもGPSなどの観測網が急激に発達して地表面の動きは精緻にわかるようになりました。

今なお日本列島を始め地球上の地面は年間数センチ単位で移動を続けています。

地球全体、息をしているかのように時々刻々変動を続けているのです。諸行無常そのものです。

太古の時代にはユーラシア大陸の東端の部分に日本列島は位置してました。

その地帯に突如として陥没が発生しました。日本海の誕生です。日本海は拡大しました。

日本列島が東北日本と西南日本で折れ曲がっているのはその名残だと書かれていました。

地震波などの測定から地球の表面を覆うプレートと呼ばれる構造も細かくわかってます。

日本列島の周辺では太平洋プレート、その上にフィリピン海プレートが乗る形で沈み込んでます。

その上には大陸のプレートがあります。日本列島は、プレート境界にあるのですから危険地帯です。

プレートが重なってひずみがたまり地震が発生しやすいことは素人でもわかります。

天の摂理がそうだとすると人間ができること、二宮尊徳の言う「人道」を考えなければなりません。

二宮尊徳は天道に任すのではなく人の英知を尽くすことを促しています。

天道という絶対の条件の下で最大限人道を発揮することは何かといえば歴史に学び備えることです。

日本列島は地震から逃れられないという事実を踏まえ人道の力を発揮する時は今です。