地球物理学者の神沼克伊(かつただ)さんの有隣堂新書『首都圏の地震と神奈川』を読みました。

2012年9月出版です。前年3月11日の東日本大震災を受けて出されました。

初版を購入したまま積ん読く状態になっていました。手に取ってみると参考になりました。

最終章に「地震に成熟した社会」という項目がありました。言葉の組み合わせが意外でした。

地震と成熟がつながりません。読み進めて行くと納得の表現であることがわかりました。

神奈川県葉山町の湘南国際村に博士課程のみの総合研究大学院大学があります。

研究テーマとして「地震予知」が取り上げられ、「地震に成熟した社会」が提唱されました。

「地震」と限定せずに「災害」一般とした方がより的確な表現だと思いました。

日本では地震などの災害をなくすことは日本列島の成り立ちからしてできません。

災害の発生を前提にいかに被害を小さくするかを社会全体で考え実践する社会を目指しています。

「減災」と相通じます。「減災」を社会づくり全般に幅広く捉えた表現だと言えます。

基本は災害に関する情報公開です。情報を的確に判断する能力も身に着けなければなりません。

訓練も必要です。一連の取り組みを住民、地域社会、行政が一体となり行わなければなりません。

自助、共助、公助による減災社会づくりが災害に成熟した社会づくりといえます。

いつの間にか菅総理の十八番の言葉の借用になってしまいました(苦笑)。

町長経験者の私としては社会づくりと言うよりまちづくりのほうがしっくりきます。

行政が住民や自治会などの地域社会を喚起し「成熟」へと引っ張っていく必要があります。

災害情報の開示とその読み取り方の学習活動が際立って重要だと思います。

地震にせよ洪水にせよ甚大な被害予測だけの情報を放り出されても対応できません。

災害ごとに被害状況は異なりますのでそれぞれわかり易いデータの開示が求められます。

ハザードマップがあれば良いという訳ではありません。それを読み解く力が不可欠です。

大人数で学んでも身に着きません。少人数のグループ学習が最適です。

大人だけではいけません。学校における災害学習は最重要だと著書の中で指摘されてます。

私も全く同感です。子供たちもやがて大人になります。小さいうちからの積み重ねは強いです。

著者は、民間と協力し合うことを勧めてます。わが意を得たりと思いました。

「足柄の歴史再発見クラブ」は、そうした役割を果たすために結成してもらったといえます。

学校や地域社会に出向き学んだ災害の歴史を伝えて一緒に考える活動を目的としてます。

行政は、わかり易いハザードマップの作成と公開、大規模な訓練実施が任務です。

学校での災害学習は教育委員会が積極的に支援しないと学校現場だけでは手に負えません。

地域社会は学習会や小規模な訓練です。そして住民一人一人は積極参加です。

行政、地域社会、住民がまとまれば災害に成熟したまちができます。強力な「減災のまち」です。