混戦は投票率をあげない
9月の神奈川県真鶴町長選挙は新人の松本一彦さんが現職に圧勝し初当選を果たしました。
現職と松本さんとの事実上の一騎打ちのかたちで勝負のかたちはわかり易かったです。
町民の関心を呼び、投票率は、4.94ポイント上がって71.78%となりました。
10月の神奈川県箱根町長選挙は、56年間続く町役場職員出身者による町政が問われました。
町役場の副町長と人気飲食店経営者の民間人との一騎打ちとなりました。
副町長出身の勝俣浩行さんが195票差の大接戦を制し新町長に就きました。
この接戦の要因となったのは投票率の高さであることは間違いないところです。
投票率は、28.75ポイントも跳ね上がり、63.46%になりました。
選挙の意義がわかり易く、戦いの構図が明確であると投票率は上がることを実証しました。
先月29日の鹿児島市長選挙は、40歳の新人の下鶴隆央さんが初当選を果たしました。
自民党が推薦する前市議や社民党が推薦する前副市長、共産党の前市議を破ってのことです。
若い県議が政党の壁を打ち破って当選を果たしたちょっとした事件だといえます。
投票率は、38.16%。前回を13.16ポイント上がったと言っても低いです。
今回と同様現職の引退を受けて新人4人が争った2004年の選挙では40.76%です。
鹿児島県では今回と同じように投票率が伸び悩む事例がありました。7月の県知事選挙です。
現職を含めて7人が争うという大混戦の選挙戦でした。新人の元官僚が制しました。
投票率は49.84%で前回の56.77%より下がっているのです。
誰が勝つかわからない選挙情勢は、今回の鹿児島市長選挙と同じでした。
以上の事例から一定の推測が成り立ちます。構図がわかり易い激戦は投票率を上げます。
激戦が過ぎて混戦となると投票率は上がっても大して上がらないか下がる場合もあります。
現役の政治記者時代激戦と投票率の上昇には相関関係はないと教えられました。
激戦ではなく混戦は投票率を上げるとは限らないと言い換えた方が良さそうです。
誰に入れて良いかわからない状況になると投票所から足が遠のくのだと推測します。
既成政党や規制組織の推せんを得た候補者支持層に起こりがちな現象であることも示しています。
政党や組織を背景に持たない候補者の方が必死で選挙活動を続けることの表れだと思います。
しかし、投票率が低い中で組織を持たない新人候補が勝利すると政治的基盤が弱いです。
今回の鹿児島市長選挙で言えば下鶴新市長の有権者全体の得票率は16%ほどに過ぎません。
当選後、支持基盤の拡大を図ることになりますのでどうしても斬新な改革がしにくいです。
若手の政治家が躍る舞台が出来たのにこれまでのしがらみがまといつくからです。
時代は若い政治家を求めています。スタートダッシュができないのは残念です。
投票率を上げ圧倒的な票数を背景にデビューすることの大切さを教えてくれていると言えます。