中島みゆき「世情」
私は政治バカで音楽分野の「世情」には全く疎いです。今頃になって知ることばかりです。
かなり前ですがNHKのBSプレミアムで中島みゆきさんの特集があり視聴しました。
ジャズシンガーでピアニストのクミコさんが中島さんの「世情」という歌を歌ってました。
私は初めて耳にする曲でした。「シュプレヒコール」という歌詞が耳に響きました。
1960年代後半に吹き荒れた学生運動の挫折を表現しているかと思いネットで調べました。
学生運動の熱気は既に冷めていた1978年4月にリリースされた曲でした。
「シュプレヒコールの波 通り過ぎてゆく 変わらない夢を 流れに求めて 時の流れを止めて 変わらない夢を 見たがる者たちと 戦うために」
この歌詞が全部で4回繰り返されます。その前後に中島さんが捉えた「世情」が書かれてます。
ひとつは世の中は常に変化するので頑固者が悲しい思いをするという見方です。
変わらないもののたとえを探し出して崩れるたびにそのせいにしてやり過ごすと捉えます。
もうひとつは世の中は臆病だから他愛のないうそがまん延しているという見方です。
学者たその他愛のないウソを見破って世間を見たような気になっていると捉えてます。
中島さんの歌詞で最も難解という解説をした方がいますが確かに容易に理解できません。
こういった時は、中島さんの全体の楽曲で表現しようとしている主題から判断するしかりません。
中島さんは「ファイト」に代表されるように戦うものを勇気づける作品を数多く残しています。
弱い者の立場を理解し励ます視点も持っています。この両者から「世情」を考えたいです。
「世情」が入っている「愛しているといってくれ」というCDを購入してしまいました。
何度も聴き直してます。それでもストンと肚に落ちません。うめいています。
結論は、学生運動で挫折した者たちへの共感を持って励ましている曲だというものです。
変化を拒むものたちへの戦いを是認しているからこそリフレインが4回もあるのだと思います。
戦う者たちの情念を肯定しているとしか思えないと勝手に解釈し納得させています。
それにしても中島さんはなぜこのような難解な詩を書いたのでしょうか。
中島さんは私より3歳上ですので学生運動の渦中の世代ではありません。
学生運動の騒然たる雰囲気がかすかに残っていたとはいえ運動の挫折感の方が大きかったです。
こうした時代の空気を受けて発表された作品ですので学生運動への挽歌と捉えたいです。
ただし単なる葬送の曲ではなく戦う者たちへの共感が込められているということです。
「世情」が収められたアルバムには「化粧」という曲も入ってます。
「化粧なんて どうでもいいと思ってきたけれども 今夜、死んでも いいから きれいになりたい こんなことなら あいつを捨てなきゃよかったと 最後の最後に あんたに 思われたい」
中島さんの歌詞には時に魔女のようなめらめらと燃える情念を発見しおののきます。