新型コロナウィルス対応の政治学69~菅官房長官無き菅政権~

私の神大での講義テーマは政策過程論です。国・地方に関わらず政策に決め方に関心があります。

安倍政権から菅政権になって政策の決め方が大きく変わったように見えます。

安倍政権当時は、総理が大枠を示し官房長官が裏方となって総理の意向の実現を仕切りました。

菅現総理がらつ腕を振るったのです。裏権力でした。その部分は闇に包まれてました。

菅政権となり、これまで裏で権力を仕切っていた人物が表の最高権力者となりました。

菅総理は官房長官から総理となっても天下国家を論じるスタイルには変身しませんでした。

国民生活に密着な実務的な政策課題を掲げて着実にこなそうとしました。

明確な国家ビジョンが不透明なまま個別課題の処理が優先される形態となったのです。

実務型といえば聞こえは良いのですが内閣全体が小粒になった感は否めません。

特にシンボルである総理は内閣の顔の意味合いよりも官房長官的要素が強まります。

裏に隠れていた官房長官が総理となって官房長官時代の政治をするイメージです。

75歳以上の後期高齢者の医療費をめぐる政府・自民党と公明党との間の意見調整が難航しました。

年収200万円でラインが引かれました。菅総理と山口代表のトップ会談で妥協案が飛び出しました。

この程度の内容を決めるのに党首会談で決着が図られたことに驚きました。

加藤官房長官が裏で調整役となり政府・与党内を調整するものと思ってました。

菅総理は、総理となって何でもかんでも決めなければならなくなったのです。

安倍政権時代の菅官房長官に当たる役割を果たす人物がいないことがはっきりしました。

難儀なことです。新型コロナ対応のように緊急事態への対応が懸念されるからです。

後期高齢者問題で決められないのに新型コロナで決断ができるはずはありません。

会議は繰り返されるでしょう。決断は全て菅総理に持ち込まれることになります。

裏でらつ腕を振るって調整する人物がいないことは菅総理に重くのしかかります。

全てに決定が遅れます。総理がこまごまとした協議にまで首を突っ込まなければ決まりません。

今週勝負の3週間が最終段階を迎えます。メリハリのついた結論が出せるか微妙です。

鮮烈な決定はボトムアップの積み上げ方式ではなかなか下せるものではありません。

最終結論は総理の頭の中にしかないと初めからわかっているのに余計な口出しをしません。

議論して時間を潰し様子を見ているのに近い状況が続いているのに過ぎない恐れがあります。

総理は時間が経てばたつほど決断力が鈍ります。様々な意見を聞いてしまうからです。

最終的に足して2で割るようなあいまいな形の決着となるのが通例だと思います。

菅総理の決断力を演出するような形とはほど遠い形で政策が決められて行きます。

決定に時間がかかるため菅総理が本来果たすべき国民への発信力も弱体化します。

菅政権の危機は、安倍政権時代の自分のようならつ腕の官房長官がいないことにあります。