2020年ベートーベン生誕250年

今年ほど音楽がごく普通にある暮らしを過ごしたのは生まれて初めてです。

在宅時間が長くなり、音楽は新たなる日常の欠かせない友人となりました。

新型コロナは人々の行動を制限し結びつけを弱めたことは間違いありません。

その一方で自らを見つめ直す時間を用意してくれた要素もありました。

大学も会社も完全リモートとなり、読書だけでは手持ち無沙汰になりました。

そんな時、音楽が手を差しのべてくれたのです。まずはテレビから始まりました。

朝ドラ「エール」の影響が大きかったです。古関裕而さんの楽曲に目を見張りました。

私は早稲田大学のラグビーの大ファンです。早稲田の紺碧の空の作曲者だと初めて知りました。

甲子園の「栄冠は君に輝く」も被爆した長崎の復興を願った「長崎の鐘」もです。

次に優れた音楽番組がありました。テレサ・テンさん、中島みゆきさんの魅力を再発見しました。

そして宮本浩次さんです。ロックはなじみがありませんでしたがはまりました。

学生時代大ファンだった岩崎宏美さんのロマンスをロック風に叫ぶように歌ってました。

そして極めつけが楽聖、クラッシック音楽界の最大の巨人ベートーベンです。

ベートーベンは、1770年12月16日生まれです。今日が生誕250年です。

NHKで年間通じて特集番組を放送していました。神に魅入られるかのようにのめり込みました。

ベートーベンの魅力とそのあまりの偉大さに心の中で常にひれ伏してます。

一連の番組で音楽研究者や指揮者や演奏家の方々が口をそろえて人類の到達点と言ってました。

決して大げさな表現ではないと理解しました。ベートーベンの作品は人類の遺産です。

音楽家でありながら耳が聞こえなくなる難病を抱えながら歓喜の楽曲を遺したのです。

9あるベートーベンの交響曲を全てNHKのEテレで放送しているのを視聴しました。

全曲共にけた外れの楽曲に仕上がっています。それでも最後の9番は特別だと解説してました。

ベートーベンと聞くと登ることを許さないそびえたつ山のような印象があります。

動かない動じないイメージです。しかしベートーベンの生涯は真逆でした。

これまでの音楽界の常識を次々と打ち破る手法を確立した挑戦者だったのです。

音楽に無知な私は一連の番組で初めてベートーベンが繰り出した技法を知りました。

徹底して論理的な手法を突き詰め同時に歓喜というこの上ない熱情を曲に込めたのです。

論理と情念という相矛盾する方向性をひとつにまとめ上げたのがベートーベンの楽曲でした。

神の領域に入ったとしか言葉が見当たりません。第9の歓喜の歌は実際に神に呼びかけています。

人々の営為によって分断された締まったこの世界を神の力によってふたたび統一して欲しいと。

新型コロナで世界中で分断が生じている2020年にベートーベンを聴く意義はここにあります。

今年がベートーベンの生誕250年だと神は承知だったのではないかと疑いたくなるほどです。