私の今年の一冊『独ソ戦』

2020年は4月に緊急事態宣言が出されて自宅にいる時間が激増しました。

読書する時間も同時進行で増えました。しかし本の購入は減りました。

私の場合、書店で背表紙を眺め、本を立ち読みしたのち気に入った本を購入します。

ときおり東京神田の古本屋に出かけるとあっという間に時が流れます。

店先に古書が並んでいますので眺めるだけでもひと仕事だからです。

新型コロナで外に出かける機会が減ったことは本を購入する機会を減らしました。

ネットで対応するしかないのですが直接手に取る喜びがないのが不満です。

ステイホーム中にブックカバーチャレンジをしたのも本を買わなかった一因です。

7日間、一冊ずつこれはという本をネットで紹介するキャンペーンでした。

ゴールデンウィーク中に始め7日をはるかに超え100日間紹介し続けました。

書棚の本を引っ張り出す機会が増え、そのまま再読、再々読となりました。

更に本を買わなかった原因があります。女性史家の宇佐美ミサ子さんの書籍類の整理です。

膨大な書籍を片付けながら気に入った本は持ち帰ってくださいということでした。

明治維新から戦前、戦中、戦後の貴重な史料をまとめた高価な書籍が山のようでした。

政治学者の丸山眞男さんの全集もありました。せっせと自宅に運ばせていただきました。

蔵書の水準が格段に上がりました。背表紙を見てひとり悦に入ってます。

本を買わない珍しい年となりました。しかし、一押しの一冊はあります。

岩波新書『独ソ戦』です。こびりついていた先入観をはがしてくれました。

著者は、在野の歴史研究家の大木毅さんです。裏表紙には著述業となってました。

独ソ戦は、1941年6月から4年にわたりナチスドイツとソビエトの間で戦われた戦争です。

この本を今年の一押しとしたのは、当時の日本の愚かさを深く知る機会になるからです。

日独の戦争方針をめぐって日本はあいまい、ドイツは明確という先入観がありました。

『独ソ戦』を読むとヒトラーは、ソビエトの国力を見下し甘く見てたことをわかります。

日本が中国の戦力を軽く見て日中戦争の泥沼にはまって行ったこととうり二つです。

独裁者スターリンに率いられたソビエトは工業生産力を伸ばし最新の戦力を蓄えていたのです。

当初のソビエト軍の敗退の背景にはスターリンが革命で軍人を粛正し過ぎ人材不足がありました。

ソビエト軍の反攻に手を焼き残虐なせん滅作戦を展開したドイツの姿は日本軍と重なります。

日独両国は結果として惨たんたる敗戦を迎えました。両国の国策の決定的誤りそのものです。

日本ではときおりナチスドイツが行った宣伝の巧みさをひそかに学ぶ発言が飛び出します。

捉え方を完ぺきに間違えています。いかに宣伝しても敗れたことこそを学ぶべきです。

狂気に陥り道を踏み外した過ちを二度と繰り返さないように細心の注意を払う必要があります。

『独ソ戦』は日本の政治リーダーたちの必読文献の一冊だと確信を持って推したいです。