ジャパンアズナンバーワン幻想からの脱却

昨年12月20日、アメリカの著名な政治学者が死去しました。

ハーバード大学の名誉教授のエズラ・ボーゲルさんです。90歳でした。

ボーゲルさんと言えばすぐに「ジャパンアズナンバーワン」との言葉が思い出されます。

1979年にはそのままの題名で著書となり日本で大反響を呼びました。

日本の経済が絶好調で日本の強さをアメリカの政治学者が認めてくれたと浮かれました。

当時の日本はアメリカの巨大な経済力に迫るのではと思われるほどの勢いでした。

しかしバブル経済の崩壊後の日本の歩みは基本基調として停滞の30年となっています。

ボーゲル教授が放った一言は日本の政財界を始めあらゆる分野を今なお縛っています。

まるで魔法にかけられてしまったかのように心の奥底で虜となっているようです。

特に政財界は夢よもう一度の呪縛にこの30年間しばられ続けていると言って良いでしょう。

安倍前政権は忠実な実践者です。大胆な金融緩和でデフレからの脱却を目指しました。

物価上昇率2パーセント目標は達成出来ずに終わり新型コロナの襲来を受けました。

一気にマイナス成長となり、夢ははるかかなたに遠のいてしまいました。

しかし、菅政権は経済のV字回復を諦めておらず依然として夢を抱き続けてます。

私は新型コロナによる経済低迷はジャパンアズナンバーワンの夢から覚めるチャンスだと思います。

いつまでもできもしない幻想に囚われていないで現実に見合った国家目標を作り直すべきです。

1945年8月の敗戦からジャパンアズナンバーワンとまで言われるまでになったのは事実です。

過去の栄光は栄光に過ぎません。時代は大転換してしまったのです。

昨日のブログの繰り返しになりますが重要なことなのでもう一度繰り返します。

人口が減少し少子・高齢化は留まるところを知りません。中国の台頭は世界を変えつつあります。

この激変の中での新型コロナです。夢よもう一度どころではないことはもはや常識です。

今必要なことは冷静に日本の実力を評価して身の丈に合った国家目標を見い出すことです。

参考となるのは戦前、反骨の経済ジャーナリストとして活躍した石橋湛山の路線です。

中国の華北侵攻を求める軍部に対し「小日本主義」を唱え撤退を促しました。

この方針を軍部が受け入れるはずはありません。石橋の路線は葬り去られました。

単純化してとらえればジャパンアズナンバーワン路線は当時の日本の軍部の方針。

石橋の「小日本主義」は孤高の理想論です。歴史は前者が大失敗に終わったことを示してます。

理想論だと退けられた路線をもし採用していたらその後の歴史は大きく変わった可能性があります。

ジャパンアズナンバーワンの呪縛の中での発想ではなく別の価値観での理想論の検討が必要です。

石橋のように夢物語のような理想論を国家目標として掲げるまで洗練させる努力が必要です。

石橋の「小日本主義」に匹敵する国家目標を掲げる政治勢力の誕生が今の日本の政治に必要です。