日本国の終末時計

世界終末時計という不可思議な時計があります。アメリカの科学者が毎年発表してます。

地球が核戦争などで破壊されてしまう残り時間を象徴的に示す時計です。

昨年1月、残り100秒とされ最も終末に接近してます。さて今年はいかに…。

日本の終末時計が欲しいです。大災害、原発事故、人口減少などを科学的に算定して欲しいです。

日本学術会議は独立機関であるのでそうした役割を担うのにふさわしいと私は思います。

そうした科学者の活動を容認する政府こそが科学技術立国を支える政府に値します。

話しを元の終末時計に戻します。日本国の破滅を予言した人物として有名なのは夏目漱石です。

具体の時間は示しませんでしたが滅亡を予言しました。小説『三四郎』の中でです。

熊本から大学に入学するため上京する三四郎に対し車中で広田先生に出会います。

「日本は良くなるでしょう」と語りかけた三四郎に対し広田先生は「滅びるね」と応じました。

漱石の予言通り1945年8月15日惨たんたる敗戦を喫し大日本帝国は滅亡しました。

漱石が『三四郎』を出版したのは日露戦争に勝利した後の1908年のことです。

この時点で後の軍部の台頭による軍国主義を明確にイメージしていたとは思えません。

明治維新後の近代社会がはらんでいる不透明さに漠たる不安を覚えての予言だったと思われます。

『三四郎』の出版から3年後、漱石は、「現代日本の開化」という講演を行ってます。

日本の近代化について欧米の表面だけを真似たものだと指摘しています。

日本の近代化の不明確さが漱石の眼には得体のしれない不安感を呼び覚ましたのだと思います。

日本は、敗戦後、今度は経済力で世界に冠たる国になる路線を選択しました。

安全保障はアメリカにおんぶにだっこ状態の軽武装のまま経済発展に注力しました。

この選択はものの見事に的中し1980年代はジャパンアズナンバーワンともてはやされました。

しかしバブル経済崩壊とともに日本の長期低落は始まり30年が経過してしまいました。

日本国は、この中奈落の底に落ちてしまうのではないかという不安感を覚えます。

不安感の原因を探ってみると日本国の針路が掘り下げられていないことに気付かされます。

戦前は欧米列強の向こうを張って軍事大国路線、戦後は経済大国路線。双方が潰えました。

日本という国がどう生きて行くのか掘り下げた議論が乏しいまま欧米を追随してきた結果です。

漱石は上っ面だけ真似てもだめだと喝破しました。再び漱石の警告に耳を傾ける時だと思います。

今こそなすべきは日本国としての生き様はどうあるべきかを考える深く真摯な議論の場づくりです。

新型コロナで右往左往の時にやれるかとの声もあるでしょうがむしろだからこそやるのです。

根本的なところから日本国の針路を問い直さずして対症療法をしたとしても解決策になりません。

日本の国力の弱体化は、欧米をもの真似して国づくりをしていることによると思うからです。