新型コロナウィルス対応の政治学77~菅総理の勘違い~

新型コロナの感染拡大が止まらない中で通常国会が開会し、菅総理大臣の施政方針が示されました。

最後の最後に政治上の師と仰ぐ梶山静六さんから初当選の時にかけられた言葉を引用していました。

菅総理が代議士のバッジを付けたのは1996年10月の衆議院選挙です。当時梶山さんは官房長官でした。

日本が人口減少・少子高齢化や経済のデフレなど厳しい状況になる中で国会議員になったとの認識を持てと諭されました。

菅総理は、最後に国民の食い扶持を作るのがお前の仕事だと言われたと述べて国民のために働く決意を示しました。

私は菅総理が引用した梶山さんの言葉を聞きながら菅総理は勘違いしていると思えてなりませんでした。

今は新型コロナの危機の真っ最中であって日本の社会構造の変化とかは直接の関係はありません。

デジタル化やグリーン経済に向けて一生懸命やっていることに関心を向けたいのでしょうが見当違いです。

食い扶持を作るとか上から目線とも受け止められるような言い回しをしている場合ではありません。

梶山さんの言動を引用したいのであれば格好の事例は別にあります。1999年9月の茨城県東海村の原子力事故の時です。

梶山さんは前年7月の自民党総裁選挙で小渕恵三さんに敗れ無役でした。それでも梶山さんは敢然と行動しました。

梶山さんは茨城県への原子力施設誘致の推進役です。旗を振った政治家として責任を果たそうとしました。

直ちに茨城県庁で記者会見を行い自らの責任を語りました。対応を急げと官邸に強力に申し入れたということです。

当時の官房長官は野中広務さんでした。野中さんから「梶さんから猛然と対策を迫られた」と聞いたことがあります。

梶山さんが怒鳴っている形相が目に浮かびます。梶山さんの怒声は建物をも揺らす感じがしたものです。

菅総理が新型コロナの危機に直面し学ぶべき梶山さんの教訓は東海村の原発事故の時の言動です。

新型コロナの感染拡大を引き起こしてしまった自らの責任についてはっきり認めるべきです。

GoToというアクセルと感染防止というブレーキを同時にふかした手法の誤りを詫びるべきです。

それなしに一生懸命やりますといわれても国民の心には響きません。梶山さんの態度を見習ってほしいです。

菅総理は国民の関心が高いワクチン接種の担当大臣に河野太郎行革大臣を充てる人事を発表しました。

河野さんの発信力に期待を寄せたのでしょうが首を傾げます。他省庁にまたがる困難な任務に河野さんは向いてません。

調整とは自らを殺してこそできる仕事です。自らを際立たせるのが得意な政治家は不向きです。

新たに調整役を充てるのであれば野中さんのようなタイプを就けるべきであって河野さんタイプではないです。

直接の担当の田村厚生大臣や調整役であるはずの加藤官房長官は内心面白くないでしょうから足並みも心配です。

菅総理、新型コロナの危機に対する対応がずれてしまっています。現状では反転は困難だと思います。