新型コロナウィルス対応の政治学78~統率の乱れ~

2003年のSARS(サーズ)ウィルス対応で失敗した台湾で語られた教訓は、対策の主体を一本化することでした。

台湾政府と首都の台北市当局との間で共通認識を持てずに対応が遅れ感染拡大を招いたと言われます。

現在の日本政府と東京都との間の一体感のなさと重なって見えます。感染拡大の真相をズバリ指摘されている感じです。

しかし、緊急事態宣言までくるとそんないざこざを感じとらせてはなりません。一体感の演出も必須です。

菅総理と小池都知事が恩讐を超えて協力する姿は新型コロナはとんでもない難敵だと国民に意識してもらえます。

国民への協力は相当の程度心理学的要素があると思います。立ち振る舞いはおろそかにできません。

ここにきて政府と東京都との溝だけでなく他県でも政府方針との食い違いが表面化してきました。

広島県の湯崎知事は広島市の中心部を対象に80万人規模ともいわれるPCR検査を実施すると表明しました。

政府がPCR検査の拡大を表明しながらなかなか実現しない現状に業を煮やした可能性もあります。

政府がPCR検査の拡充に踏み切れないのは検査体制と患者の受け入れが追い付かないのを恐れているのだと思います。

また一回行えば完了というものではなくウィルスの侵入が疑われるたびに対応しなければなりません。

中国のように外出を厳禁して対象地域の住民全員PCR検査を実施して陽性者は隔離というようにはなりません。

数十万人単位の検査をしたのにもかかわらず中途半端な検査になってしまう危険性が付きまといます。

神奈川県は保健所の業務がひっ迫していることを理由に濃厚接触者の追跡業務を縮小することとを発表しました。

濃厚接触者の追跡をしないということは必然的にPCR検査数は減少し感染者を見逃す可能性が増えます。

広島県とは逆に神奈川県では感染者把握がおろそかになる危険性が出てきたと言えると思います。

保健所業務が多忙を極めているのであれば市町村との連携で職員の応援を得る方法があるように思います。

神奈川県でいちばん積極果敢な首長だと私が評価する海老名市の内野市長に直接問い合わせました。

すでに県に対し応援を申し入れていて保健師を派遣していました。更に一般職も考えているとのことでした。

県の市長会を窓口にして応援を募るべきだと助言もしたと聞きました。こうした動きを強めるべきです。

プライバシーに密接にかかわる業務ですのでその点を考慮しなければなりません。市町村からの応援が適当です。

神奈川県の方も保健所による濃厚接触者の追跡を縮小すると並行してPCR 検査を拡充する手立てが必要です。

感染が疑われる正当な理由がある方が公的補助でPCR検査が受けられるよう対応をとるべきです。

そうしないと県の本来の業務を放棄しているとの批判が間違いなく出て来ます。急ぐ必要があります。

政府と各都道府県の対応策、ちぐはぐ感が顕著になってきました。菅総理の統率力に陰りが出ています。