ロシアを見ると世界と日本の今が解る
日曜日の夕方午後6時5分からのNHK「これでわかった!世界の今」、ほぼ毎週見ています。
子供でもわかるようかみ砕いたニュース解説が優れものです。但し、わかりやすさは危険を伴います。
極端に単純化して真実を捻じ曲げる恐れがあります。決まり切った先入観に毒された表現をしてしまうこともあります。
昨年6月放送の番組でアメリカの黒人差別に反対するデモをめぐり不適当な表現がありNHKが陳謝しました。
今週7日の放送はミャンマーのクーデターとロシアのプーチン大統領に対する反対デモがテーマでした。
ロシア問題の解説が秀逸でした。中国情勢や日本の政治状況の分析にそっくりそのまま応用できます。
ロシアでは絶対権力を握る独裁者のプーチン大統領が豪勢な宮殿を密かに建てているとネットで話題になってます。
仕掛けたのは野党指導者のナワヌルイ氏です。しかしナワヌルイ氏は拘束されてしまいました。
プーチン政権の言論弾圧に対しロシア全土で釈放を求める抗議デモが発生し混乱が続いています。
ロシアでは、新型コロナのまん延に加え、主力輸出品である原油価格の低迷による経済の停滞があります。
市民の不満が高まっているのであればプーチン政権の土台が揺らぐかと見てしまいがちですが実態は違います。
支持率は依然として60パーセントで安定してます。多くの国民は混乱を嫌っているのです。
30年前に急速な改革で国家が揺らぎソビエト体制の崩壊に陥った苦い体験を現在まで引きずってます。
国家を立て直してくれたのが2000年に登場したプーチン大統領です。国民は感謝の念を持続させています。
民主化より暮らしの安定を国民は選びました。このロシアの歴史は、中国に貴重な教訓を与えたはずです。
自由化を急ぎ過ぎ国家を混乱させてはならないという教訓です。共産党一党独裁を堅持する大義になります。
香港の自由化要求や新疆ウイグル自治区における少数民族の独立運動への徹底弾圧は全てこれで説明がつきます。
西側のメディアで自由化を求めるデモなどが報道されると体制が揺らぐかと思ってしまいます。
しかし、その感覚は西側諸国の色眼鏡を通して視る幻想です。独裁国家はそのぐらいでは微動だにしません。
独裁国家にとって経済が困窮し国民が耐えきれなくなることがいちばんの脅威なのです。自由化ではありません。
暮らしの安定を求め政治の混乱を避ける指向性は自由と民主主義を掲げる国々にとっても共通性が見られます。
日本において菅政権がこれだけ逆に逆風に襲われても自民党政権から野党政権への声は湧きあがりません。
2009年8月の総選挙で民主党政権が誕生しました。2012年12月まで続いた民主党政権は混乱続きでした。
自民党政権の失政があっても民主党政権の混乱には戻りたくないとの国民心理が働いていると見るべきです。
旧民主党勢力の再結集で生まれた立憲民主党は、国民の強い不信感が底流にあることを自覚することが先決です。